小麦の畑も緑色よりも黄色が目立つようになってきました。やはりカルピスは「濃いめ」が好きなAID研究センター所長です。
今回は、新たに「AgriBus-Web」で表示されるようになった土壌水分について解説してみたいと思います。
土壌のpF値とは
「AgriBus-Web」での土壌水分は「過湿」から「過乾」までの4段階で表示されるようになっていますが、これは土壌のpF値をもとに区分しています。
そこで、まず土壌のpF値について説明したいと思います。
「pF」とは1935年にSchofield氏が提唱した新しい考え方で、作物の根が土壌に含まれる水を吸う時にどのくらいの吸引力(吸引エネルギー)が必要となるかを示しています。ちなみにpは高校の数学で習った常用対数「log10」を、Fは「Free Energy」を示すとされています。
それではpFはどうやって決めるのでしょうか。
まずpFの定義は
pF = log10(H) ただし Hは水柱の高さ(cm)
となっています。
水柱の高さは吸引力を示しており、例えば水にさしたストローの口に掃除機をつないだ時、掃除機の吸引力が高いほどストローの中の水柱が高くなるようなイメージになります。
作物の根との関係で見ると、pF値が低い時、すなわち土壌水分が高い状態の時には作物は土の中の大きな隙間にある水分をあまり吸引力を使わないで吸収できます。
しかしpF値が高まり、土壌水分が低く乾燥状態になると根は狭い隙間にある水分を吸収するようになりますが、この場合には土の中の水分は毛管力などの影響で動きにくい状態となっており、より高い吸引力が必要となります。
「AgriBus-Web」での土壌水分の読み方
今回「AgriBus-Web」でのpF値は降雨量から独自のアルゴリズムを用いて推定しており、表に示したようにpF値に応じて「過湿」「湿潤」「乾燥」「過乾」に区分しています。
「過湿」は機械作業に適さない状態で、この状態で作業を行うと「踏圧」や「練り返し」によって土壌の物理性が急激に悪化するリスクが高まります。
一方「湿潤」「乾燥」「過乾」は土壌の物理性が悪化するリスクは小さいですが、「過乾」の場合には砕土性が低く、砕土作業後に大きな土塊が残りやすくなります。
また「過乾」では干ばつ傾向となり作物の生育に影響する状態で、もし畑地かんがいなどの設備があれば散水を行うなどの対策が必要となります。
「AgriBus-Web」での設定のポイント
「AgriBus-Web」では、「畑の水はけ」を「良好」「やや悪い」「悪い」の3段階に分けてあらかじめ設定することができます。このため降雨後の畑の排水の状況を観察して、その畑に合わせた「畑の水はけ」を設定することが推定精度を向上させるポイントとなります。
当社ではトラクタを用いた機械作業を支援するデータを提供することにしており、今後も気象データを活用して機械作業体系の組み立てに役立つツールをリリースする予定となっています。ご期待ください。