AID研究センター所長てす。
今回はISOBUS規格でタスクコントローラは「どのようなデータをやり取りしているか」をテーマにして深掘りしてみたいと思います。
取り上げるISOBUS規格は、「ISO 11783 part11:Mobile data element dictionary(モバイルデータ要素の辞書)」です。
ISO 11783 part11 について
「ISO 11783 part11:Mobile data element dictionary(モバイルデータ要素の辞書)」は、タスクコントローラを通してトラクタや作業機などがやり取りできるデータの定義などについて記載されており、具体的なデータはドイツ機械工業連盟(VDMA)のサイトにあるisobus-netから入手することになっています。
これらのデータはData Dictionary Entity(DDE)と呼ばれ、Data Dictionary Index(DDI)という連番が付けられて管理されています。現在DDEの登録数は663項目となっています(なおメーカーが独自に設定できるDDEとして8026個のDDIが確保されてますが、この分はまとめて1個とカウントされています)。
基本的にはタスクコントローラはDDEとして登録されているデータしか認識できません。具体例として施肥深さはDDEに登録されていないため作業機の制御などには利用できません。
これらの663項目のDDEの内訳を項目別にして集計してみると、最も多い項目は「トラクタ」関連のデータとなります。また「資材施用量」や「セクションコントロール」のデータも上位にランクされています。このことはISOBUSを利用したセクションコントロールの導入がブロードキャスタやプランタなどの作業機で増えていることの裏付けとなっていると考えらます。
また作業機では「ベーラ・ラッパ」関連のデータが最も多く、以前ご紹介したノンストップベーララッパの開発につながっていると思われます。逆に自動化が期待される「耕うん」関連のデータは7項目となっており、作業の自動化に向けた研究開発が望まれます。
さらに「農業経営情報システム」において重要度の高い「気象」・「作物」・「土壌」のデータについては下位にランクされ、特に「土壌」は最下位となっています。これらのデータについても他の分野の研究者と連携しながら、データを充実させていく必要があります。
次にDDEの具体例を見ていきたいと思います。
サンプルとして「プランタ」に関連するDDEを一覧表にしてみました。プランタに関連するDDEは25項目で、株間や播種深さなどの播種精度に関わる項目や土壌が硬い場合に播種ユニットを強制的に押し付ける場合の押付圧力や押付力も用意されています。
またデータの単位はmmやppmなどの小さいサイズの単位が設定され、逆にデータの範囲は桁数の多い整数値となっています。これはタスクコントローラで小数点処理を行わないようにして計算過程をシンプルにする狙いがあるようです。
異なる例として「土壌」に関連するDDEをまとめてみました。
「土壌」では土壌凍結や土壌水分など営農に直接関係するデータで構成されいますが、データを指数で表現するDDEが多くなっています。
指数の例として「DDI470 土壌の締固め程度」の判定基準を示します。土壌の締固め程度は、貫入式土壌硬度計(コーンペネトロメータ)などで土壌硬度を数値化することが多いですが、DDE470ではナイフなどで土を刺して、刺さり具合から指数を決定するようになっています。
DDEの登録動向に注目
以上のようにタスクコントローラで利用できるDDEがISOBUSを利用した作業機の開発のキーポイントとなっています。このため今後のISOBUS作業機の開発動向を見据えて、isobus-netに登録される新たなDDEに注目していきたいと思います。