こんにちは!グラフィックデザイナーの小野寺です。 「小野寺千穂デザイン事務所」という屋号で、北海道釧路市を拠点に地域の人たちのお悩みや困りごとに耳を傾けながら、地域に寄り添ったデザインを行っています。 縁があって、農業情報設計社のデザイン全般をフルリモートでお手伝いさせてもらっています。
今日は農業情報設計社のロゴを作成したときのプロセスを公開します。
現在のロゴが生まれたのは2016年。それまでは代表濱田が自作したロゴが使われていました。
このロゴも優しい雰囲気で良かったのですが、事業拡大にあたりロゴを刷新したいとのことで、新しいデザインを提案しました。
まずはターゲットユーザーを設定します。 「誰」に向けて届けるサービスなのか、なるべく具体的に属性を挙げていきます。通常は仮説ベースで進めていくのですが、今回は農業情報設計社の主力商品「AgriBus-NAVI」の情報交換やユーザー同士の交流を目的としたFacebookグループ「AgriBus-NAVI友の会」が存在し、ユーザーである農家さんがかなり活発に投稿をしてくださっていたため、特にアクティブに書き込みをしている方を2名挙げさせてもらって、属性を抽出していきました。
次に、ポジショニングマップを使って現在の立ち位置を明確にします。 ここは認識を共有するためのものなのであっさりめに。大規模化・大型化して先行投資がかさんでしまうこれまでの保守的な農業ではなく、小規模化・小型化し、誰にとっても使い勝手のいい製品をITの力で届けるという先進性が農業情報設計社の立ち位置であることを改めて確認します。
次に、ターゲットユーザーとポジショニングを元に、ブランドコンセプトを定義します。いきなりロゴを作成するのではなく、最初にコンセプトを定義することで、「そもそも」に立ち返ることができ、ビジュアルに一貫性を持たせることができます。
ここでは、ターゲットユーザーから導き出された「論理的、合理的」というキーワードや、ポジショニングマップで確認した「小規模化・小型化」というキーワードを元に、「小さな単位の集まりが組み合わさる・連携することで成長していく」という意味を込めて、「拡張性 scalable」をコンセプトとしました。
さらにコンセプトを元に、ブランドコピー(キャッチコピー)を導きます。 先ほどの「拡張性 scalable」を一文にして、「scalable your farming」としました。
次にブランドカラーを決めていきます。 ここでは日本カラーデザイン研究所の「5色配色イメージ・スケール」というマトリックスを使っています。キーワードを配色に変換できる優れもので、このイメージスケールを使って配色を検討していきます。
これまで抽出したキーワードに近い単語(合理的、革新的、進歩的、理知的)をスケールにあてはめていくと、右下の「モダン」というエリアにマッピングされることがわかりました。 ちなみに旧ロゴのカラーをスケールにあてはめると、「ナチュラルな、安全な、快適な」といったキーワードに変換されることから、配色の面から見ても、打ち出したいイメージへ軌道修正する必要があることがわかります。
(ブランドイメージがわかりやすい企業として、ヤンマーのロゴもマッピングしてみています。ヤンマーは直接の競合ではないですが、競合をマッピングすることで自社のポジショニングを配色からも確認することができます)
先ほどのイメージ・スケールを元に、「この色の組み合わせを使えばブランドイメージが統一される」という3色をピックアップします。
そしてロゴを3案提案しました。まずはA案。 ブランドコンセプトである「拡張性」を元に、十勝の畑のパッチワークや畝・トラクターの跡などから着想を得た案です。 名刺や封筒、ウェブサイトなどの展開例も作成して、ロゴが使用された状況がイメージしやすいようにしています。
次はB案。「Agri Info Design」の頭文字をブロックのようにモダンに組み合わせた案です。
そしてC案。農家さん同士の有機的なつながりとAgriの「A」を組み合わせてイメージを膨らませた案です。テック企業っぽく。
実は私はB案が個人的に気に入っていたのですが、代表濱田と初期メンバー田名辺とのビデオ会議で議論した際、「別にAとかIとかDとか頭文字にこだわる必要は無いよね」ということで(確かに…)、A案をブラッシュアップしていくことになりました。
時にはビデオ会議で私の画面を2人に共有して、その場でIllustratorファイルを開いて「もう少し色をこうしたらどうかな?」と、色味を微妙に調整していきました。ライブデザイン。
その結果決まったのが現在の、こちらのロゴです。
それぞれの色にも役割を持たせました。 緑:農作物を表現 青:空を表現 黄土色:大地や穀物を表現
シンボルマークはいくつかパターンを作って、組み合わせて使えるようにしています。(いくつか並べると畑のパッチワークが広がっていくようなイメージ)
今回はロゴができるまでの経緯を書いてみました。 これからも様々なデザインを打ち出していきますので、ネタができたら(気が向いたら…)また書きます。お楽しみに…!
小野寺千穂デザイン事務所 グラフィックデザイナー 小野寺千穂 http://onoderachiho.com/