9月となり、馬鈴しょの収穫、小麦の播種などの作業が続く農繁期となりました。農作業安全のことが気になるAID研究センター所長です。
今回は、ISOBUSに対応した農業機械の代名詞ともいえるブロードキャスタを取り上げていきたいと思います。
ISOBUSに対応した機能
ブロードキャスタは、小麦や牧草などの畑で広範囲に肥料を散布する作業機械で、例えば写真の Sulky社のX40+という機種では、肥料を12~44mの幅で散布することができます。
ブロードキャスタを使う時には、あらかじめ「施肥量」と「散布幅」を実際に測定した後、取扱説明書に記載されている目盛などを調整して設定値に合わせる必要があります。しかし、ISOBUSに対応している機種では、運転席に設置した端末の画面を操作することで、これらの調整を簡単に行うことができます。
1.施肥量の自動調整
ブロードキャスタの施肥量は、通常面積当たりの肥料の散布量(kg/m2)で表されます。
計算式としては
単位時間当たりの肥料の繰出量(kg/s)÷単位時間当たりの作業面積(m2/s)
=単位時間当たりの肥料の繰出量(kg/s)÷(作業速度(m/s)×散布幅(m))
となります。
この時、肥料の繰出量は肥料ホッパの出口にあるゲートの開度で、作業面積は作業速度と散布幅で調整します。ただし作業面積を調整する場合には、散布幅は防除通路の間隔に合わせて決められており、作業速度を調整することが現実的です。
ISOBUSに対応している機種では、 このゲートの開度を自動的に制御して施肥量を自動調整しています。この機構により作業速度が変動しても、その変動に合わせてゲートの開度を調整して、常に一定の施肥量にすることができます。この機能を「速度連動」と呼び、例えば上り下りの傾斜がある畑で作業速度が変化する場合に有効です。
写真は『CC-ISOBUS』より引用 https://www.cc-isobus.com/en/gps-precision/
また近年、作物の生育状況を数値化できるセンサーや土壌の養分量の分布を示すマップを作る技術が発達し、これらのデータに合わせて施肥量を調整する「可変施肥」という新たな技術の導入が進んでいます。
ISOBUSに対応したブロードキャスタでは、センサーやマップのデータをもとにして施肥量を自動調整する「可変施肥」にも対応しています。
2.セクションコントロール
写真は『KRM』Section Controll より引用:https://www.krm-ltd.co.uk/Bogballe/Dynamic.htm
三角形や台形など変形した畑では、同じ幅で肥料を散布すると作物がない部分にも肥料を散布することになり、無駄な肥料代がかかることになります。また変形した畑の縁に用水路や明きょなどの水路がある場合には、直接肥料が水路に入り、水質が汚染されてしまいます。
セクションコントロールは、肥料を散布しない部分がある時に、肥料ホッパのゲートの開度を自動的に開閉して、その形に合わせて肥料を散布できる機能のことで、変形した畑でメリットが大きいとされています。
近年北海道でも導入が増えているBOGBALLE社が提供している動画が、以上の機能をわかりやすく解説しています。
ISOBUSに対応したブロードキャスタを活用することで、「速度連動」や「可変施肥」などの機能により、精度の高い施肥作業が行えます。また「セクションコントロール」によって、肥料代の節減や水質汚染の防止などの効果が期待できます。
ところで、「AgriBus-NAVI」アプリでもセクションコントロールの開発をしているとかいないとか。いつになったら実装されるのでしょうか。この場を借りて代表にエールを飛ばしつつ。ご期待?ください。