コラム「世界の農機から」第1話 〜ISOBUSについて〜

Editorial

世界には、面白いアイディアで開発された農業機械がたくさんあります。その中で気になる機械を、このコーナーで紹介していきたいと思っています。

第1話は、最近注目されている「ISOBUS」について簡単に説明します。というのも、世界ではこの「ISOBUS」に対応した農業機械がスタンダードになりつつあるため、農業機械を紹介する前に、規格の内容について説明しておく必要があるためです。

(AEF資料より)

ISOBUSとは

◎そもそもISOBUSって何?
「ISOBUS」とは簡単に言うと、トラクターと作業機が情報をやり取り(情報通信)するために定められた国際規格です。
昨今のトラクターや作業機は電子制御化が進み、お互いに情報通信を行なっています。例えばトラクターの走行速度(車速)に合わせて作業機の動作を制御したり、作業機の設定情報を記憶したり、これまでは運転・操作する人の勘やスキルで補っていたことが自動化されるようになっています。
こういった情報通信を、世界中のどのメーカーのトラクターと作業機の組み合わせでも、確実に行なえるようにするために整備された世界共通の「お約束」がISOBUSなのです。

◎「ISOBUS」のメリットは?
・トラクターと作業機を1つのケーブルで接続するだけで通信・動作可能となるので、余計な配線や操作器機が不要となります。トラクターの操作パネルから作業機のすべての機能をコントロールすることができます。
・ISOBUS規格に準じた農業機械を使用すると、トラクターと作業機のメーカーが違っても組み合わせて使用できるので様々な機械の選択ができます。

◎「ISOBUS」の対応状況は?
欧米ではISOBUSが制定された当初から主要なトラクターメーカーはISOBUSに対応しています。最初は150馬力以上のいわゆる中型・大型機種への対応がメインでしたが、昨今は90馬力前後の小型のトラクターにも対応が広がっています。
また、作業機メーカーについても、近年は大規模メーカーから中小規模のメーカーまで取り組みが進んでおり、スプレーヤ、ブロードキャスタ等の資材散布用機械、播種機やポテトプランター等の畑作用機械、ロールベーラーをはじめとした草地用機械など、作業機全般に対応機種が増えています。
初に「ISOBUS」の概要について説明したいと思います。

「ISOBUS」は「ISO 11783 Tractors and machinery for agriculture and forestry – Serial control and communications data network(農林業用トラクタ及び作業機のシリアル制御及び通信データ・ネットワーク)」という国際規格に準拠しています。

 この中で、いくつかのキーワードを説明します。

1.シリアル制御

シリアル制御は「シリアル通信」による制御を意味します。「シリアル通信」とは、データが回転寿司のお皿のように連続して流れる方式です。

シリアル通信

2.コネクタ・ケーブル

ISOBUSで用いられるコネクタとケーブルは、それぞれの端子とケーブルに割り付けられるデータの内容は、あらかじめ決められています。

コネクタとケーブル

(AEF資料より)

3.通信制御方式

通信制御方式とは、 シリアル通信でのデータの順番や長さについての取り決めを指します。

通信制御方式

Godoy他、2010より)

ISOBUSには認証制度があり、Agricultural Industry Electronics Foundation(AEF 国際農業電子財団)のテストに合格した機種のみが認証され、認証ラベルが交付されるしくみとなっています。

AEFで認証される項目

AEFでは、現在開発中のものを含め、ISOBUSに関する9つの項目を認証しています。

ISOBUSの認証項目

(MyEasyFarm社ホームページより)

1.UT(Universal Terminal)

端末に関する基準です。

【求められる性能】
・一つの作業機がいろいろな端末で制御できるか?
・一つの端末でいろいろな作業機が制御できるか?

2.AUX-N(Auxiliary Control “New”)

補助制御装置(主にジョイスティック)に関する基準です。

【求められる性能】
・正しく作業機が制御できるか?

AUX-N(Auxiliary Control “New”)とAUX-O(Auxiliary Control “Old”)
の2つのタイプがあるが互換性はない

3.TC-BAS(Task Controller basic/作業機)

タスクコントローラーに関する基準です。

【求められる性能】
・作業を評価できるデータを表示してるか?
・作業機がデータを送信しているか?
・タスクコントローラから営農支援ソフトにISO-XML形式
 でデータを渡すことができるか?
・作業データのインポート・エクスポート機能があるか?

4.TC-GEO(Task Controller geo-based)

タスクコントローラーで地理情報を扱う場合の基準です。

【求められる性能】
・地理情報を入手できるか?
・地理情報をもとした作業を行えるか?
(例:マップに基づいた可変施肥など)

5.TC-SC(Task Controller Section Control)

セクションコントロールを行うタスクコントローラーの基準です。

セクションコントロールとは、作業機を数セクションに分割し、それぞれのセクションのON・OFFを自動的に切り替える機能です。

【求められる性能】
・位置情報と重複作業面積データから全自動でセクションコントロールを行うことができるか?
(例:スプレーヤ、播種機、ブロードキャスタ)

6.TECU(Tractor ECU)

トラクタの電子制御を行う、トラクタECUに関する基準です。

【求められる性能】
・速度やPTO回転数などのデータを出力できるか?
・トラクタ後部とキャビン内に接続端子が配置されているか?

なお設定できる内容からClass1・ Class2・ Class3に分けられます。

各クラスで求められる性能

7.ISB(ISOBUS Shortcut Button)

ボタンで機能のON・OFFができるISOBUSショートカットボタンに関する基準です。

【求められる性能】
・ISOBUSターミナルと接続した作業機の機能を停止できるか?

ISBで停止できる機能については、それぞれのメーカーで事前に設定していなければなりません。

8.TIM(Tractor Implement Management)【開発中】

TIMはトラクタと作業機の双方向の制御を可能とするための基準です。

現在トラクタECUの情報の流れは一方通行で、作業機側からトラクタの作業速度やPTO軸の回転数などを制御するこができません。しかしTIMが開発されることで、自動的に最適作業条件での作業が可能となります。

この機能がISOBUSの最大のメリットと言えます。

Epec社ホームページより)

9.LOG(Logging of device values independent of the task)【開発中】

トラクタや作業の作業記録データ(ログ)を収集し、集計することを想定した基準です。これによりトラクタ・作業機と営農支援ソフトのデータの互換性が高まります。

【求められる性能】
・ISOXML形式で作業記録データをエクスポートできる
・ネットワークで接続されたデータロガーが使用できる


AEF資料より)

弊社ではISOBUSに対応した農業機械の設計やシステム認証などについてコンサルティングを行っております。興味や関心がある方はぜひお問い合わせください。

次回から、ISOBUSに対応したいろいろな農業機械を紹介していきたいと思います。

 

【画像などの引用元】AEF ISOBUS database

https://www.aef-isobus-database.org