コラム「世界の農機から」第5話 ~機械作業の大問題【踏圧】~

Editorial

11月になり、冬期間に向けて機械を格納する準備を始める時期となりました。通勤の時は「サイモン&ガーファンクル」をエンドレスでかけているAID研究センター所長です。

 

今回は、機械作業が抱える永遠のテーマ「踏圧」について考えてみたいと思います。

踏圧って何?

機械作業を行う時にトラクタなどのタイヤで畑の土が踏まれて、特にタイヤ跡の土が堅く締まる現象を「踏圧(Soil Compaction)」といいます。

「踏圧」が大問題となるのは、堅く締まった土によって「水はけ(排水性)」が悪くなったり、作物の根が伸びにくくなりして、最終的には作物が減収してしまうためです。

タイヤの下で起きていること

(Keller他、2017)

Keller氏らの資料の図によれば、タイヤに踏まれた土には球根状に圧力が伝わり、土を締めていきます。図の赤い部分は圧力が高く、青色が薄くなるにつれて圧力が弱まります。

 

(Michelin社ホームページ)

またMichelin社の資料に示されているように、タイヤに踏まれた土は圧縮されて変形します。この時、特にタイヤと接している部分は変形量が大きく、すき間のない締め固まった状態になります。

これによって水や空気の通り道が塞がれ、作物の根が生育しにくい環境となつてしまいます。

 踏圧対策として考えられること

踏圧対策を考える時のキーワードは「接地圧」と「走行回数」です。

1.接地圧

「接地圧」はタイヤが土に接している面での圧力を示し

接地圧(kg/cm2) = タイヤにかかる重量(kg) ÷ 接地面積(cm2)

 という式で計算され、この値が高いと踏圧に対する影響が大きくなります。

この式から接地圧を下げるためには、「接地面積を大きくする」、あるいは「タイヤにかかる重量を軽くする」という2つの考え方があります。

(1)接地面積を大きくする

・クローラ

世界的に導入が増えている技術で、上の写真のようにトラクタのタイヤの代わりにクローラを装着する方法です。なおクローラは土木工事のブルトーザーなどで使われている、いわゆるキャタピラーのことですが米国キャタピラー社の登録商標なので、今回はクローラという用語を用いることにします。

クローラは帯状に土と接することができるため、接地面積を大きくすることができます。

・ダブルタイヤ

上記のKeller氏の資料で、右側のトラクタのようにタイヤを2列にして接地面積を増やす考え方で、この図で示されるように赤い圧力が集中した部分がなくなり、接地圧が下がっていることがわかります。

・低圧タイヤ

上記のMichelin社の資料で、右側のタイヤのようにタイヤの空気圧が低い状態で接地面積が広がるタイプを「低圧タイヤ」と呼びます。このタイヤを用いることで接地面積が大きくなり、この図で示されるように土の変形量が小さくなります。 

(2)タイヤにかかる重量を軽くする

次に「タイヤにかかる重量を軽くする」という考え方ですが、重要なポイントがあります。それはトラクタが作業機を引く力、いわゆる「けん引力」とのバランスを考えなければいけないということです。

一般的に「けん引力」は「タイヤにかかる重量」に比例して大きくなります。(後輪駆動の車で冬道を走る時に、後部座席に重たい荷物を載せて走った経験をお持ちの方ならイメージを理解していただけるかも・・・)

 このため、畑を起こす作業などでは「けん引力」が必要となる場合には、「タイヤにかかる重量」が重い、すなわち機体重量が大きいトラクタの方が望ましいと考えられます。

一方、除草作業のようなあまり「けん引力」を必要としない作業については、逆に「タイヤにかかる重量」が軽い、機体重量が小さいトラクタを選択することが望ましいといえます。

現実的には「けん引力」が必要となる場合、機体重量が大きいトラクタを使うことになります。このような場合は、「接地圧」を上げないようにダブルタイヤや低圧タイヤなどを活用して「接地面積」が大きくする工夫が必要です。

2.走行回数

タイヤが同じ所を踏む回数、いわゆる「走行回数」も踏圧に影響します。

図は走行回数を変えた時の深さ別の貫入抵抗値(土の硬さを示します)を比較した図です。この図で、特に深さ10~15cmの部分で走行回数が2回以上となると、貫入抵抗値が走行前と走行回数1回の場合よりも高い値を示し、かなり土が硬くなっていることがわかります。

このことから、同じ部分を2回以上走る作業方法は踏圧の影響が大きくなることがわかります。

走行回数を減らす対策としては、例えば播種作業を行う時に、トラクタの前部に砕土作業を行うハローを、後部に播種機を装着した「複合作業機」を利用するなどの方法があります。

(Duttmann他、2014)

また最近Duttmann氏らの論文で見られるように、GPSを用いた走行軌跡のデータから、「走行回数のマップ」を作成しようとする試みが増えてきています。

このようなマップがあると、例えば空撮データを用いた作物の「生育マップ」やコンバインなどに装着されている収量センサーから得られた「収量マップ」と組み合わせることで、生育不良や収量低下の要因を踏圧による土壌環境の悪化と推察することができます。

今回は機械作業で大問題となる「踏圧」について考えてみましたが、最後に示した「走行回数のマップ」については、個人的には将来的にぜひ弊社の製品にも組み入れてみたいアイテムであると思うのですが、果たして・・・