ISOBUS規格を深掘りする(第4回)ISOBUS規格ではどのようなルールでデータをやり取りしているのか?

ISOBUS

AID研究センター所長てす。

今回はISOBUS規格でトラクタ・作業機・周辺機器は「どのようなルールでデータをやり取りしているか」をテーマにして深掘りしてみたいと思います。

このルールがISOBUS規格のメインテーマであるため取り上げるISOBUS規格は多くなりますが、「ISO 11783 part1: General standard for mobile data communication(モバイルデータ通信の一般基準)」、「ISO 11783 part2: Physical layer(物理層) 」、「ISO 11783 part3: Data link layer(データリンク層)」、「ISO 11783 part4: Network layer(ネットワーク層)」、「ISO 11783 part5: Network management(ネットワークマネジメント)」の5つの規格となります。

 

ISO 11783 part 1について

「ISO 11783 part1: General standard for mobile data communication(モバイルデータ通信の一般基準)」は使用する用語の定義などISO11783の全体に関わるルールを規定しています。

その中でデータのやり取りを円滑に行うために、通信に関わる機能を整理して「物理層(part2)」・「データリンク層(part3)」・「ネットワーク層(part4)」という3段階に分類するとともに、「ネットワークマネージメント(part5)」としてネットワーク管理の基本ルールを定めています。

以下にこれらの規定について説明したいと思います。

ISO 11783 part 2について

「ISO 11783 part2: Physical layer(物理層)」は回路の電気的な接続を確保するために、データ通信で用いるコネクタの規格やピン配置、電圧や抵抗の設定値などに関したルールを規定しています。

コネクタの規格については「Deutsch」が付く場合が多く、ドイツで用いられている規格が中心となっています。

ISO 11783 part 3について

「ISO 11783 part3: Data link layer(データリンク層)」はデータの構造(フォーマット)やデータ通信の基本的なルールについて規定しています。

データの構造はCAN通信で用いられている「CAN拡張データフレーム」に準拠しています。このデータフレームでは「調停フィールド」「データフィールド」などの「フィールド」と呼ばれるデータの配置場所とデータ量が規定されたエリアに割り振られており、「定型文」のような構造となっています。

「調停フィールド」では18ビットのPGN(パラメータグループ番号)を指定するようなっており、この通信から「何を述べたいか」ということがわかるようになっています。

「データフィールド」は8バイト(1バイトは8ビットなので8✕8=64ビット)に固定されており、「0と1の数列」が64個つながっています。「データフィールド」では「調停フィールド」で指定したPGNに対応したSPNのデータが配置されています。この時PGNSPNのデータの内容や配置位置・長さを指定しており、このルールに沿ってデータが配置されます。

なおPGNSPNの関係について前回のブログをご覧ください。

また「調停フィールド」では「データの発信元」を特定するために必要な8ビットの数値で示された「ソースアドレス(Source Address 略してSA)」も必ず配置することになっています。

ISO 11783 part 4について

「ISO 11783 part4: Network layer(ネットワーク層)」はデータ通信に関係する具体的なルールなどについて規定しています。かなり専門性が高く、システムを組み立てる時に必要となる規格となっています。

内容としてはデータ通信で用いるPGNや、「データフィールド」のデータの内容(例えば通信の相手先のポート番号)など通信を制御するための情報について記載されています。

ISO 11783 part5について

「ISO 11783 part5: Network management(ネットワークマネジメント)」は「誰とデータのやり取りをするのか」を明確するためのルールについて規定しています。この規格も専門性が高く、システムを組み立てる時に必要となる規格となっています。

ISO11783では「誰とデータのやり取りをするのか」を明確するために、機械に搭載されている「機能(ファンクション)」を「作業者」に見立て、「誰と」の部分はこの「作業者」のことを指すことになっています。

この「作業者」は「コントロールファンクション(Control Function 略してCF)」と定義されています。

「コントロールファンクション」は、「データフィールド」に展開される相手先の情報を組み合わせた「NAME」というデータセットで管理されます。「データフィールド」における「NAME」のデータは、機械の種類を示す「デバイスクラス」、機械の機能を示す「ファンクション」コントロールファンクションの本体)、機械のメーカーを示す「製造業者コード」およびデータ通信を行うECUに製造業者が独自に割り振った「識別番号(いわゆるシリアルナンバー)」などのデータが配置されます。

「デバイスクラス」は各機械に割り振られており、現在27番まで登録されています。具体例としてトラクタは1番、プランタは4番、スプレーヤは6番などです。

「ファンクション」は各機械に搭載される機能として整理されており、例えば4番のプランタに割り振られた135番は「播種深さ制御」、6番のスプレーヤの場合は「ブーム高さ制御」となっています。また129番の「セクションコントロールON・OFF」は各機械共通となっています。これらの「ファンクション」は、それぞれ個別の「作業者」として認識され、「コントロールファンクション」として管理されます。

製造業者コードは農業機械メーカーを含む世界中のメーカーに割り振られており、ISOBUS対応のトラクタや作業機を販売していないメーカーでも製造業者コードは存在します。

具体例としてはAmazoneは348番、CLASSは103番、John Deereは12番、日本のメーカーではササキコーポレーション社は555番、東洋農機は1223番です。

ちなみに当社も製造業者コードが割り振られており、629番となっています。

以上のことを踏まえ、一例としてAMZONE社(製造業者コード348番)の施肥機(デバイスクラス5番)のセクションコントロールのON・OFF制御(ファンクション129番)の「NAME」を示します。なおこれらの数値はCAN通信でやり取りされるため、2進法で0と1のの数列に換算され所定の位置に配置されます。

なお今回取り上げたPGN・SPN・製造業者コードなどの具体的なデータはドイツ機械工業連盟(VDMA)のサイトにあるisobus-netから入手することができます。

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